サンプル測定
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はじめに
固体高分子物体の分子構造は、個々の分子鎖が長いため、それらが凝集すると分子鎖どうし絡み合った状態になり、不規則な配列をしたものと、各分子鎖自身折り畳んで、 他の分子鎖と規則的な配列をしたものがある。
前者を非結晶性高分子、後者を結晶性高分子という。
分子鎖のモノマーやセグメントの種類によって非結晶性か結晶性に分かれるのである。 或いは密度の高低により分かれるものがある。
今回は非結晶性高分子の動的粘弾性測定を行い、粘弾性データと温度との関係から物質の特徴について考察する。 
測定条件
1)機 種: Rheogel-E4000
2)測定法: 動的粘弾性測定
3)モード: 温度依存性
4)温度範囲(℃): -130~150
5)昇温速度(℃/min): 3
6)測定間隔(℃) パ2ラレルプレート
7)周波数(Hz): 10
8)測定治具: 引っ張り
9)試料形状(mm): 幅4 厚み2 長さ35
10)試 料: PVC
測定結果
図3縦軸左のE’(Pa)は貯蔵弾性率といい、物体が外力を与えられて生じる内部エネルギーである。極低温-130℃から温度上昇に対して黒い曲線がなだらかに下降している。 これは、試料の熱膨張に伴う、凝集力の緩和過程である。80℃付近でその曲線の傾斜が急になり、110℃で少し緩やかになっている。 その温度範囲は物体のガラス転移が生じているのである。
ガラス転移では、凝集力により静止していた分子鎖が僅かな運動を始めるため内部エネルギーの低下が顕著になる。傾斜が急になる理由である。
非結晶高分子は、結晶性高分子に較べてガラス転移におけるE’の低下が大きい。
ガラス転移を終えると、分子鎖の僅かな運動は継続しているが、温度上昇に伴う内部エネルギーの低下が緩やかになりその曲線に反映しているのである。
赤い曲線E”(Pa)は損失弾性率といい、物体が外力を与えられて、生じる熱エネルギーである。損失の由来は物体の内部エネルギー増量にならず、外部へ拡散する意味をもつ。 さて、この曲線は黒い曲線のようなかたちと異なり凸が生じている。凸が生じる原因は、物体が温度との関係で転移(凝集構造に変化)が生じ、 運動エネルギーの上昇によるものである。80~110℃(ガラス転移)の温度範囲でシャープな凸が生じている。分子構造の凝集が緩和し始めるとE”が増大し、 ある程度緩和が進行するとE”が下降に切り替わる。
このガラス転移における物体の状態が粘弾性体である。80℃以下の凝集過程は固体特有の弾性要素が強く、 110℃以上のガラス転移終了後は粘性要素が強い。
縦軸右のtanδ(青い曲線)は損失係数といい、内部エネルギーE’(Pa)と比較した熱エネルギーE”(Pa)の大きさに関するパラメータである。 100℃付近における大きな凸は、ガラス転移における上記のE’、E”の挙動に伴うものである。E”とtanδのピーク温度が合致していないところが興味深い。 これはE”ピーク直後の傾斜よりもE’の傾斜の方が大きく、その後逆転してE”の傾斜の方が大きくなっているためtanδ(=E”/E’)のピークが生じるのである。
粘弾性測定におけるガラス転移の最も大きな特徴である。
本測定には、非結晶性高分子PVCを使用したが、結晶性高分子と非結晶性高分子の分類を表1に挙げる。
[参考文献]
  1. レオロジー入門(工業調査会発行 岡小天 編著)
    第8章 固体粘弾性