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  • 試料に正弦波の応力を与えると正弦波のひずみが生じる。
  • 応力波形のピーク値にひずみ体積(試料の幅*厚み*ひずみピーク値相当の変位)を掛けると、エネルギーが求まる。
  • 応力波形のピーク値をひずみ波形のピーク値で割ると(複素)弾性率E*(Pa)が求まる。
  • 応力とひずみ体積により生じたエネルギーのうち試料内部に貯える成分に比例する係数が貯蔵弾性率E’(Pa)、熱として試料外部へ拡散する成分に比例する係数を損失弾性率E”(Pa)という。
    [E*はE’とE”のベクトル合成値]
図1 図1の-60℃以下では、E'がE"よりも10倍以上おおきく、エネルギーの90%以上が試料内部に貯蔵される。
E'が10^9(Pa)以上の場合、試料の状態は固体である。
-70℃から徐々にE"が上昇し、E'との差が小さくなるほど試料外部へエネルギーの拡散が増している。エネルギーの拡散が上昇する過程は、強く絡み合った試料内部の分子の鎖(高分子)が少し緩み、分子鎖が徐々にミクロブラウン運動をしやすくなることが影響している。
E"は-50℃でピークになり、そこから拡散するエネルギー成分が低下しはじめる。これはE'の低下も伴っており、試料の軟化により全エネルギー(貯蔵と損失)が低下しているためである。
-50℃のE"ピークの温度をガラス転移温度という。
図1のtanδはE"とE'の比(E"/E')であり、その上昇はE’に対するE"の割合が増大する過程に相当し、tanδピーク以降は逆にE"の割合が減少する過程に相当する。-60℃以下におけるE'が平坦でE"より10倍以上大きな試料の性質を固体弾性、30℃以上にみる同様な性質をゴム弾性という。固体弾性からゴム弾性へ移行する過程をガラス転移、その間の性質を粘弾性という。
 固体弾性は、試料内部における分子鎖どうしの絡み合いが強く、分子鎖の身動きがとれない状態にある。E'が平坦であることは、温度を上昇させても、その温度範囲では分子鎖の絡み合いに変化がないのである。
 粘弾性は、E'が顕著に下降していることから、温度を上昇させるとその温度範囲内で、分子鎖の絡み合いが解れていく過程が現れている。
 ゴム弾性は、分子鎖どうしの絡み合いが解れた後、分子鎖どうし架橋しており、ネットを形成した網目構造が弾性の役割をしている。
 弾性とは、物体に外力を与えると同時にひずみが生じ、その外力を除くと同時にひずみが消える性質をいう。
固体弾性は物体内部で分子鎖どうしが強く絡み合った状態のところへ外力を与えると応答する性質であり、ゴム弾性は物体内部で分子鎖どうしがネットを形成した状態のところへ外力を与えると応答する性質である。
図2図2は試料3種についてE'(貯蔵弾性率)の比較である。
 固体弾性(E'が10^9Pa以上)のE'は試料Cが他より小さく、E'の低下も他より低温側で生じている。
 試料Cは他より分子量が小さい。
 その理由は分子量が大きいほど、分子鎖どうしの凝集による絡み合いが強く、昇温に対してそれらが解けにくいためである。
 低温域の平坦部(固体弾性)における試料Aは、試料Cと平行、試料Bと幾分傾斜がことなることから、試料Bは他の試料と材料の成分が異なるためであると考える。
 試料Bの低下ポイントが試料Aよりも高温側であることから、分子量はBの方が大きいように伺えるが固体弾性、ゴム弾性ともE'は試料Aの方が大きいことに着目すると、分子量はAの方が大きく、成分の違いによる影響で試料Bの方が、試料Aよりも高温側で固体弾性からE'が低下していると考える。
 ゴム弾性では、分子量が大きいほど分子鎖どうしで形成するネットの網目が小さい。すると物体の一定ひずみに対して与える外力が大きい。その結果、分子量の大きさにE’が比例する。


図3 図3は損失弾性率E"ピーク温度(ガラス転移温度)の比較である。
 温度の順位は、図2のE'低下ポイント順位と同一である。
 このE'低下ポイントをガラス転移温度と称する場合もあるが、同一試料においてE'低下ポイント温度とE"ピーク温度に差があることから、ガラス転移温度(目印)はどちらかに統一して試料間の比較をする必要がある。