2つの固体表面を張り合わせる界面に接着剤を塗り、それが固化すると引き剥がそうとした際に強い接着力が生じる。
接着力の主役は接着剤硬化物である。接着力は接着剤と被着体の界面に作用する力であるが、ここには接着剤が固化する過程において生じる収縮力も作用している。
(図1)
収縮力は接着力の妨げになり、それが大きいほど接着力が低下するのである。
接着剤硬化物の動的粘弾性測定を行い、収縮力との関係について考察する。
収縮力が接着剤の固化過程に起因する固体(接着剤硬化物)の内部エネルギーであることから、
収縮力と直接関係する項目は動的貯蔵弾性率E’(Pa)である。
E’(Pa)は温度に依存し、物体の温度上昇に伴って低下している。
収縮力がE’(Pa)に比例することを考えると、低温下で大きく、高温下で小さい傾向になる。
うえに述べた収縮力が接着力の妨げになることから、 低温下では接着力が小さく、高温下で大きい傾向になる。
E’(Pa)の曲線は、正に接着剤硬化物の収縮力及び接着力の分散地図を予測させるべきものと云える。
材料設計においてE’(Pa)を下げて接着力を向上させるためには可塑剤の添加量を増す検討をするが、E’(Pa)を下げすぎると接着剤硬化物自体が変形しやすくなる問題が生じる。
動的損失弾性率E”(Pa)及び損失係数tanδの上昇は硬化物の運動エネルギーに相当し、硬化物の収縮力を緩和させる方向に作用するものと考える。言い換えるとゴム的な役割が、
接着界面における接着力の妨げ(収縮力)を抑えるのである。
またtanδのピーク値は接着界面における耐衝撃性(制振性)と関係するものと考える。