固体高分子物体の分子構造は、個々の分子鎖が長いため、それらが凝集すると分子鎖どうし絡み合った状態になり、不規則な配列をしたものと、各分子鎖自身折り畳んで、
他の分子鎖と規則的な配列をしたものがある。
前者を非結晶性高分子、後者を結晶性高分子という。
分子鎖のモノマーやセグメントの種類によって非結晶性か結晶性に分かれるのである。
或いは密度の高低により分かれるものがある。
今回は非結晶性高分子の動的粘弾性測定を行い、粘弾性データと温度との関係から物質の特徴について考察する。
図3は動的貯蔵弾性率E’(Pa)と温度の関係について、シリコーンゴムと合成ゴム3種の比較である。
貯蔵弾性率とは試料に外力を与えることにより生じた内部エネルギーである。各曲線とも低温側と高温側で段差を現し、
低温側を固体弾性、高温側をゴム弾性両者の変化過程をガラス転移という。
相対的にシリコーンゴムのガラス転移は合成ゴム3種よりも低温側に現れ、脆化温度が低いことを意味する。
またシリコーンゴムのゴム弾性(-40℃以上)は平坦であることを示し、これは特性が温度に対して依存(変化)しないことを意味している。
このグラフからシリコーンゴムは、広い温度範囲で変わらぬ特性を維持していることが判る。
またゴム弾性領域の貯蔵弾性率が合成ゴムよりも低いということは、緩衝性に富んだ柔らかい弾性物体であることが判る。
上記の用途に挙げたシーリング剤や美容整形の充填剤には気温や体温の変化に対して特性が安定している材料として、
また歯科医療の型取り剤には複雑なかたちに弾性変形させやすい材料としてシリコーンゴムを適用する。