前節(2.クリープと応力緩和)の一定応力または一定ひずみを与える静的測定(図1)に対して、
動的粘弾性測定は高分子物体に与える応力とそれに応答するひずみが正弦波である。
図2は動的粘弾性測定の状態を示している。応力とひずみの位相(正弦波)が存在し、
両者の波形ピーク値と時間軸上における位相差(ひずみの遅れ)との関係から物体の粘性要素と弾性要素を測定することができる。
一方静的測定は、遅延時間や緩和時間という粘性率と弾性率の比が求まり、それぞれの数値は求まらない。静的測定と動的測定の大きな相違点である。
物体に与える正弦波の周波数や温度を変化させることにより、物体の応答がそれらに依存している傾向は、弾性率の連続的変化となって現れる。
依存傾向の違いは物体の内部構造と密接に関わっており、測定データから物体の分子構造に基づく材料特性を解明することができる。
位相差δは0~1/4π( 90°)の範囲内に現れ、0°に近い場合E”が極めて小さく、90°に近い場合E’が極めて小さいことが図4の関係からわかる。
貯蔵弾性率E’は物質が外力を受けることにより生じたエネルギーのうち物質内に入る成分、損失弾性率は物質外へ出る成分である。
位相差と関係するE’E”それぞれの相対比において、E’が大きいほど物質の状態は固体、逆にE”が大きいほど液体である。
但し上記の引っ張りは液体の測定はできないため、その場合、せん断による測定を選択する。
せん断の場合、3種引っ張り弾性率E*E’E”に対応する、せん断弾性率G*G’G”で表記する
固体は弾性体、液体は粘性体、E’とE”が比較的近い物質の状態が粘弾性体である。
E”/E’=tanδは損失弾性率E”に依存しており損失正接と言う。