液体の密度は、それが固体(融解するまえの結晶)であるときとほとんど同じである。ゆえに液体の分子間距離も、固体(結晶)における分子間距離とほとんど同じである。
したがって、液体の弾性の原因は固体の弾性の原因と同じで分子間に直接作用している力である。
(
7.固体弾性参照)
液体と固体の分子間距離はほとんど同じであるが、分子間に直接作用する力の大きさが顕著に異なるのである。
液体は分子周りに自由体積があり、動きやすい状態が分子間に直接作用する力を弱めている。
固体の分子周りに存在する自由体積が極めて小さく動きにくい状態が分子間に作用する力を強めているのである。
液体や固体の弾性は温度上昇とともに減少する。これは温度上昇とともに生じる熱膨張が原因となって、
分子運動に関する上述の自由体積が大きくなり分子間に作用する力が弱められるためである。
液体の粘性の原因も弾性同様に分子間に作用する力である。弾性は物質に外力を与えると同時に分子間距離に一定の変化が生じる性質、
粘性は物質に外力を与えるとある速度で分子間距離に連続変化が生じる性質である。
前者は時間に依存しないが、後者は依存するところが対称的である。液体の粘性は物質の“流れにくさ”のめやすと解釈できるが、
本質的には分子の動きにくさのめやすである。すなわち分子間に作用する力の度合いという意味では弾性と共通するのである。
液体の“流れにくさ”の原因を考えるうえで、分子を剛体球とみなしたとする。すると液体は剛体球が無数に集まったものと解釈でき、
それらの隙間が大きいほど“流れにくさ”と対称的に“流れやすさ”の方向へ作用するものと想像できる。
この剛体球(分子)間の隙間を自由体積という。液体の粘性は自由体積が小さいほど大きい(流れにくい)と考えられ、
極限に自由体積が小さくなると流れることができなくなる現象が生じる。
―ラッシュアワー時、超満員の電車の中では全く身動きがとれないように―
自由体積が極限に小さくなり、流れることができなくなった状態が固体である。自由体積が小さくなる原因は温度の低下にあり、
液体の温度を下げてゆき流れることができなくなった状態をガラスという。しかし、見かけ上(短い時間内では)流れないのであるが、
このガラスも長時間に渡ればわずかに流れの生じた液体なのである。
―長さ1mの細長いガラス棒をその両端で水平に支えて常温で5年間放置すると棒の中央部が自重で1cm垂れ下がったそうである。―