Q1
プラスチックスの溶融粘度を測定する場合、
コーンプレートとパラレルプレートの選び方について教えて下さい。
A1
定常流粘度測定を行う場合はコーンプレートが適正ですが、ギャップセットの際に試料の抵抗力が大きい場合や抵抗力が緩和しない場合はパラレルプレートを使用します。高い溶融粘度にはパラレルプレートの方が適正です。プレート軸方向の抵抗 力が残った状態で測定するとせん断応力がその抵抗力の影響で高くなります。 パラレルプレートは試料の粘度に応じてギャップを調整することで抵抗力の影響を避けることができます。 但し、パラレルプレートは中心から半径に向けてせん断速度が速くなります。粘度は半径から求めたせん断速度による数値です。
コーンプレートのせん断速度は中心から半径まで均一であるため、低い溶融粘度の場合は定常流粘度測定に同プレートの方が適正です。
Q2
マスターカーブに関係する動的粘弾性測定の条件メニューについて教えて下さい。
A2
測定モードメニューから、周波数依存性、温度依存性、周波数温度依存性のいづれかを選びます。 周波数依存性の場合は、測定温度の異なる複数の測定データファイルが必要です。 温度依存性の場合は正弦波と合成波のいづれかを選びます。 正弦波 の場合、周波数の異なる複数のデータファイルが必要です。 合成波の場合、ひとつのデータファイルからマスターカーブが作成できます。周波数温度依存性の場合も同様です。 合成波の場合は正弦波の温度依存性同様、狭い温度間隔の測定に有利ですが、動的変位を周波数水準に分散します。ある程度大きめの変位設定が必要です。
正弦波の場合は周波数依存性、周波数温度依存性ともに測定温度間隔を狭くすると、測定時間が長くかかります。また、周波数温度依存性モードの場合は等速昇温下で 周波数依存性の測定を行うことで測定時間の短縮ができます。
設定条件の目安は下記の通りです。
周波数依存性選択時のデータファイル間における測定温度間隔:5~10℃
正弦波による温度依存性選択時のデータファイル間における周波数範囲:1~200Hz
合成波による温度依存性選択時の基本周波数:1Hz以上、合成波最大周波数:200Hz
周波数温度依存性選択時の測定温度間隔:5~10℃、周波数範囲:1~200Hz
Q3
正弦波と合成波の選び方について教えて下さい。
A3
周波数温度依存性モードの測定を行う上で、測定温度間隔を狭くとる場合(3℃以下)は合成波が有利です。等速昇温下で1回のサンプリング時に選んだ周波数水準のデータが同時にプロットされるので、1回のサンプリング時間は正弦波の周波数1水準におけるサンプリング時間とほぼ同じです(合成波の一番小さい周波数と正弦波の周波数が同じである場合)。ただし、合成波の周波数間隔は設定する一番小さな周波数に対して2のべき乗(0~8)と決まっています。また設定した動的変位振幅から生じる試料のひずみを数水準の各周波数へ割り振りますので比較的大きめの変位設定(±5μm以上)が必要です。
一方、正弦波は各周波数における位相や応力とひずみの位相差をモニター上で見分けやすいことや各周波数を任意に設定できることが特長です。 但し、合成波と異なり選んだ周波数を1水準ずつ測定するため1ループ(周波数水準)の測定時間が長くかかり等速昇温下で測定の場合、各ループの測定温度間隔を狭くとることができません(5℃以上)。 また、1ループの周波数間で温度勾配(等速昇温)が生じます。 
Q4
引っ張りと圧縮測定治具の選び方について教えて下さい。
A4
試料形状がフィルムですと引っ張り測定治具を選びます。 試料の状態が温度依存性に伴って十分柔らかくなり(ガラス転移温度より高温側)、弛みや流動をはじめるようになると引っ張りの測定限界です。 およそ貯蔵弾性率105Paが境界線です。
このように柔らかくなった状態の試料には圧縮測定治具を使用します。 ただし、試料の厚みが1~3mm程度なければ正しい弾性率を求めることができません。 また、厚みは十分あるが固い状態の試料(ガラス転移よりも低温側)に対して圧縮測定治具は不向きです。 およそ引っ張り測定治具による有効な貯蔵弾性率E'(Pa)測定範囲は105~1011、圧縮測定治具によるそれは103~108です。 
Q5
引っ張りと曲げ測定治具について使い分けの目安。
A5
板状測定試料の材質が金属や複合材は曲げ測定治具を使用します。 理由は引っ張りを選ぶと試料の長さ方向に外力を与えても、その方向へひずみ難いため精度良く弾性率を求めることができません。 曲げ測定治具は試料両端を支持して、中央に垂直方向から外力を与えることで比較的試料がひずみやすく精度良く弾性率を求めることができます。 測定試料が板状の固体プラスチックスの場合は、一般的に引っ張り測定治具を使用します。 これは金属や複合材料に較べて、長手方向へひずみやすいことが長所になり、曲げのように試料中央を鋭利な圧子で外力を与えると、試料表面にひずみが生じやすいことが短所になるためです。 試料が繊維状の金属、複合材料は引っ張り測定治具を使用します。曲げは応力が小さいことやたわみが生じるため使用できません。
【試料形状】
1)引っ張り:幅3~5mm 厚み0.1~3mm 長さ25~30mm
2)曲 げ :幅3~5mm 厚み0.5~2mm 長さ40mm 
Q6
引っ張りと捩じり測定治具について使い分けの目安。
A6
必要な測定項目が縦弾性率の場合は引っ張り、せん断弾性率の場合は捻りを選びます。 どちらでも良い場合、板状測定試料の材質が金属や複合材は捻り測定治具を使用します。 理由は試料の長さ方向に外力を与えても、その方向へひずみ難いため精度良く弾性率を求めることができません。 捻り測定治具は引っ張り同様に試料両端を治具で挟みます。 引っ張りとの違いは一端を固定した状態で他端で回転方向に外力を与えるところです。 比較的捻りによるひずみが生じやすいことで精度良く弾性率を求めることができます。 測定試料が板状の固体プラスチックスの場合は、試料の厚みで引っ張りと捻りの適用性が異なります。
【試料形状】
1)引っ張り:幅3~ 5mm 厚み0.1~3mm 長さ25~30mm
2)捻 り :幅8~10mm 厚み0.5~2mm 長さ40mm
Q7
自動静荷重と静荷重一定について使い分けの目安。
A7
静荷重は動的力より適度に大きな値を与えることにより、動的引っ張り測定中に試料が弛むことなく精度良く弾性率が求まります。 ガラス転移領域を含む温度領域でゴム、プラスチックスの温度依存性を測定すると試料の状態変化に伴い動的力が連続的に大きく変化します。 動的力の変化に対して、静荷重を同様に変化させることにより、その温度領域において動的力よりも適度に大きな静荷重を試料に与えることが維持できます。 このような温度依存性の測定には自動静荷重を適用します。 自動静荷重は動的力に比例した値で制御することを目的としており、その荷重値を指定することはできません。 静荷重値を指定して制御する場合は、静荷重一定を適用します。 この場合、動的力が大きく変化ずる温度依存性ですと静荷重と動的力の比が適正でなくなる温度領域が生じて、静荷重値の非適正な温度領域では試料が伸張して破断したり、弛んだりすることがあります。静荷重一定すなわち荷重値を指定する目的は、動的測定における試料の弛みを抑えるための静ひずみを静荷重値に委ね、その荷重値を比較する試料間で統一するところです。
Q8
ギャップ制御と荷重一定制御について使い分けの目安。
A8
液体の温度依存性を測定する場合、コーンプレートを使用します。そのコーン先端と向かいのプレート間の距離はコーンカット高さに相当の0.05mmです。 温度上昇に伴い金属部の熱膨張によりその距離は狭まってゆき、やがて接触し荷重が上昇します。この上昇がせん断応力に影響し粘度測定の誤差になります。 これを避けるためにギャップ制御を使用します。 ギャップ制御は熱膨張による距離の変化をキャンセルする方向に働き、結果0.05mm一定を維持します。 ゴムや固体の測定時はプレート間距離が任意であるパラレルプレートを使用します。 この場合も温度依存性の測定を行うと金属部の熱膨張による荷重変化がせん断応力に影響するため、ここでは荷重一定制御を適用します。 ギャップ制御を適用しないのは、試料と金属の熱膨張率の違いで荷重が変化するためです。降温過程の場合、試料とプレートの接触面が離れてしまうこともあります。 液体をパラレルプレートで測定する場合は、荷重一定制御を適用すると応力緩和の影響で距離が0になってしまうためギャップ制御を適用します。